コラム

三菱UFJ銀行さま

電力の「可視化」で変わる省エネ意識
全国約200施設で推進する脱炭素への挑戦

カーボンニュートラルの実現が世界的な課題となる中、企業においても環境負荷の低減が求められています。特に、大規模な施設を全国に展開する企業では、エネルギー使用量の管理と最適化が重要なテーマとなります。
国内最大手のメガバンクである三菱UFJ銀行さま(以下、三菱UFJ銀行)は、2021年に日本の銀行として初めて、カーボンニュートラル宣言を公表しました。その後、カーボンニュートラルの実現と持続可能な事業経営の両立をめざし、さまざまな施策を展開。その一環として、「国内の銀行建物におけるエネルギー使用量を、2030年度までに2019年度比30%削減する」という目標を掲げています。

この目標達成に向け、2024年11月より全国200施設でエネットの省エネ支援サービス「Enneteye(エネットアイ)」を活用した省エネ施策を開始しました。

本記事では、Enneteye導入のご担当者である総務部・総務グループ・カーボンニュートラルラインの布施健一さん(以下、布施)、佐々木利夫さん(以下、佐々木)、そして元住吉支店のサステナブル担当である秋田谷岬さん(以下、秋田谷)に、導入の経緯や現場での反響などについてお話を伺いました。

※本記事は2025年2月の取材に基づくものであり、閲覧時点と記載内容が異なる場合がございます。

元住吉支店では輪番制で必要のない電気を消灯するのが習慣に

省エネアクションの課題は
「データの鮮度」と「現場の意識改革」
「感覚」ではなく「データ」での取り組みへ

(布施)私と佐々木は、総務部で電力の契約管理や再エネの調達など、銀行全体の省エネ施策を担当しています。「2030年度までに2019年度から30%のエネルギーを削減する」という省エネ目標を達成するために、これまで省エネ対策として空調設備の更新やLEDへの切替えといったハード面の対策を進めてきました。また、ソフト面では夏や冬の電力ピーク時期に、空調設定温度や不在エリアの消灯を呼びかけるといった取り組みも行っていました。しかし、現場の行員が電力使用量の現状を把握ができていない状態では、省エネの意識が根付かず、積極的な省エネアクションにはつながりにくいと感じていました。また、夏と冬の電力ピーク時期のあとに電力使用量を振り返っても、対策への反映が翌年となってしまい、効果的な省エネアクションにつなげることが難しいという課題もありました。

(佐々木)行員は電気の専門的な知識があるわけではないので、電力使用量がどのタイミングで増加するのか、省エネの余地(ポテンシャル)がどこにあるのかを理解するのは難しい状況でした。そこで、データを「可視化」することで、より具体的な行動へとつなげられるのではないかと考えました。

総務部で電力管理を担当する佐々木さま

1年間の試験導入で得た確かな手応え
データが示す「見えなかった無駄」

(布施)データ鮮度の高い「電力使用状況の可視化」という課題をどう解決するかと考えていたときに、エネットさんからEnneteyeによる省エネのご提案をいただきました。電力会社なのに省エネの提案をされるのは、なかなかないですよね(笑)。でも、エネットさんより「省エネは電力の小売事業者としても、進めていかなければならない使命だと思います」と、とても熱心に語られて、私どもも一緒にアクションを起こすべきだと感じました。そこで、Enneteyeのサンプルデータをいただいたのですが、まさに当行の特徴が現れていて驚きました。例えば、冬のある支店では、朝一番にすべての照明と空調を一斉につけてしまうことで、電力使用量が一気に跳ね上がっていました。このデータを現場に見せると、『最初に出勤した人が、全フロアの照明と空調を付けるとこんなに電気を使用するものなのか』と気づきにつながり、人がいるエリアから順次スイッチを入れていくというルールを設けたところ、ピーク時の電力使用量が大幅に削減されました。これは全国に展開できると手応えを実感し、本格導入を決めました。

総務部で「省エネカルテ」による省エネアクション普及に尽力する布施さま

AI分析×可視化で「自分ごと化」を促進
省エネスコアがアクションを後押し

(布施)従来、省エネ施策は年間の電力使用量を合算して評価していましたが、Enneteyeでは30分単位での分析が可能になり、施設ごとに時間単位での省エネポテンシャルが明確になりました。

(佐々木) 施設ごとに省エネのポテンシャルが異なるため、一律の呼びかけでは効果が出にくい現状がありました。しかし、Enneteyeでは、省エネスコアを数値化できるため、どの施設にどれほどの改善余地があるかを一目で把握できます。自分たちの施設が、省エネできる余地がどれ位あるのかが明確にわかり、省エネアクションにつながりやすくなったと思います。

(布施)AI判定も大きかったですね。はっきりと「この施設はまだ改善の余地があります」と言われると、そうなのかとアクションしやすくなります。

より使いやすくするためにー自社開発による「省エネカルテ」

(布施)今回の本格導入にあたり、エネットさんから提供されたデータをデータ分析ツール「Tableau(タブロー)」を使って、行内ネットワークで閲覧できるダッシュボード「省エネカルテ」にまとめ、行員がいつでも誰でも見られるシステムを構築しました。2020年の電気事業法の改正で、電力契約先の会社が施設ごとに異なっても、日本全国にある当行全施設のデータを統一フォーマットで、エネットさん経由で入手できるようになったので、全国にある約200施設の「省エネカルテ」をまとめて作ることができるようになりました。 *1 従来の「省エネカルテ」は、省エネ診断を通じて専門家が1拠点ずつコストをかけて作成されるものでしたが、Enneteyeを活用した「省エネカルテ」なら200拠点をまとめてデータ分析し、AIによるアドバイスも作成されます。電力会社が設置する電力量計スマートメーターを活用するため工事の必要がなく、30分ごとの情報をいつでも見ることが可能です。開発にあたっては、綿密にエネットさんとやり取りさせていただきました。私どもの施設は日本全国にあるので、外気温も施設によって大きく違います。気温は、電力使用量の増減に直結するため、気温データも施設ごとに表示するカスタマイズの対応もしていただきました。「省エネカルテ」では、日ごとの電力使用量と気温のグラフを同時に見られる仕様となっています。例えば冬場では、気温が低いと電力使用量は上がり、高いと下がります。ところが、暖かい日に電力使用量が多い日もある。これはどこかで無駄があるのではないかと省エネアクションがしやすくなります。

(佐々木)「省エネカルテ」のデザイン・開発は、行内のデータ・DX推進を所管しているデジタル戦略統括部が担当しました。データ分析のプロが所属しており、どのような見せ方をすればよりわかりやすくなるか、綿密に設計しています。情報量が多すぎると、見るのがいやになりますから、情報量はそこそこでポイントを押さえたものにしました。最初の1ページで概要がわかるようにして、詳細を見たい人は2ページ目を見ていただければわかる工夫をしています

EnneteyeのデータをTableauによるインターフェイスにカスタマイズ、直感的に電力の利用状況がわかる


冬季平均9%、夏季平均7%
現場も実感する電力使用量削減の手応え

(布施)Enneteyeの1年間の試行期間では、導入した施設において、前年度比冬季平均9%、夏季平均7%の電力使用量を削減することができました。また、朝の急激な電力使用の上昇が抑えられたことで、最大需要電力のピークも緩和され、電力コストの削減にもつながっています。日本では、昼間は太陽光などの再生可能エネルギーの割合が多くなりますが、太陽光発電が少なく需要が大きい朝と夕方は火力発電所の稼働率を上げて電力供給をまかなっています。このため、朝と夕方の時間帯に無駄な電力を減らすことが、環境負荷の軽減にもつながると考えています。

 

元住吉支店でサステナブル担当として省エネアクションを推進する秋田谷さん


(秋田谷)私は、元住吉支店でサステナブル推進チームのリーダーとして、今回の取り組みを担当させていただいています。Enneteyeのデータを活用した「省エネカルテ」の導入以前から元住吉支店では省エネの活動はしておりましたが、具体的な課題がわからないまま、支店の行員に省エネのお願いを呼びかけている状態でした。今回「省エネカルテ」を導入したことで、省エネポテンシャルが明確になり、省エネを推進しやすくなりました。可視化された電力データのグラフから、電気を使いすぎた日時を具体的に把握できたので、支店内に課題を明確に伝えることができました。その結果、支店の行員が自主的に電気を消してくれるようになりました。私は担当ということもあり、率先して使っていない場所の電気を消していたのですが、不在の時もあります。そんな時は他の行員が私の代わりに消してくれて「これからは、輪番制で担当していこう」という提案をいただき、支店全体での取り組みとなったことが大きな成果と感じています。おかげさまで試行期間の元住吉支店の電気使用量は、2023年度冬季は前年度比11%、2024年度夏季は前年度比8%の削減を実現することができました。

お客さまと協働で脱炭素社会をめざす

三菱UFJ銀行は、金融機関として、自社のお客さまが「脱炭素」に取り組めるソリューションを作り上げることをめざしており、特に中小企業のお客さまにはわかりやすく、コストをあまりかけずに、手軽に取り組める施策が必要であると考えています。そのためには、まずは三菱UFJ銀行自身が、ロールモデルとして、Enneteyeを活用した省エネアクションを進めることで、自社のお客さまにも提供できるソリューションが作れるのではないかと考えています。

1社1社が行う省エネは小さなものかもしれませんが、三菱UFJ銀行のお客さまやエネットのお客さまに広がっていくことで、大きな力となり、それが日本の「脱炭素社会の実現」につながっていくのだと強く感じています。これからも三菱UFJ銀行とエネットで協働しながら省エネアクションを推進していければと思っています。

 

Interview

左から総務部佐々木さま、布施さま、元住吉支店秋田谷さま※本情報は2025年3月現在のものです。

三菱UFJ銀行さま

2050年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロ、および2030年までに当社自らの温室効果ガス排出量のネットゼロを達成するというMUFGの目標のもと、グループの一員として「国内の銀行建物におけるエネルギー使用量を、2030年度までに2019年度比30%削減する」を掲げ、さまざまな取り組みを推進中。

https://www.bk.mufg.jp/index.html

導入サービス

※カテゴリーに沿ってサービスのリンクが表示されます。プレビュー画面にてご確認ください。

*1:資源エネルギー庁「電力データ活用の推進について」

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/082_06_00.pdf