1939年、東京・羽田に創業した大塚鉄工株式会社(以下、大塚鉄工)。現在は羽田の本社と福島県白河市の工場を拠点に、自動車、産業機械、建設機械などの熱間鍛造部品を製造されています。大塚鉄工では、2016年よりエネットの特別高圧電力をご利用いただき、2020年からはEnneGreen®(エネグリーン)による実質再生可能エネルギーの導入も開始されています。今回は、大塚鉄工 社長室 室長の椎名さま(以下、椎名)に、製造業におけるCO₂削減や節電の取り組みについてお話を伺いました。
※本記事の内容は2025年4月の取材に基づくものです。閲覧されている時点で変更されている場合がございます。
電力自由化を受けていち早く決断
新電力への切り替え
(椎名)大塚鉄工では、2016年からエネットの特別高圧電力を契約しています。電力の小売が全面的に自由化された2016年、経済界の集まりの場で、当時の弊社副社長がエネットの方とお会いし、サービスのご紹介をいただいたことがきっかけでした。
大塚鉄工は、鉄を鍛造するメーカーです。高温に熱した金属をプレスして塑性加工を行うことで、高い強度と靭性を実現する「熱間鍛造」によって製品を製造しています。この加工には、鉄を約1,200度にまで加熱する工程が必要で、非常に多くの電力を消費します。そのため、製造コストの実に約10%を電気料金が占めており、電気代の削減は特に重要な課題でした。
そうした中で、エネットのサービスは非常に魅力的でした。とはいえ、当時はまだ今ほど新電力に関する情報が出回っておらず、不安を感じる面もあったと思います。しかし、エネットは2000年の電力自由化スタート当初から、業界のトップランナーとして実績を積み重ねており、その点に大きな安心感がありました。さらに、株主にNTTファシリティーズ(現在はNTTアノードエナジー)、東京ガス、大阪ガスといった、日本のライフラインを支える企業が名を連ねていたことも、切り替えを決断する後押しとなりました。
エネットに切り替えたことで、年度によりばらつきはあるものの、年間でおおよそ2,000万円の電気代削減につながっており、非常に大きなコストメリットを感じています。
EnneGreen導入と「品質環境方針」による
CO₂削減への取り組み
(椎名)その後、2020年にはEnneGreenを導入し、CO₂削減にも取り組んでおります。製造メーカーとしてCO₂の削減は社会的責任であり、当社だけでなく、業界全体が早くから取り組んできた課題でした。さらに、お取引先企業さまからも脱炭素への対応を求められるケースが増えており、早急な対応が必要でした。
EnneGreenの導入により、実質再生可能エネルギー由来の電力へと切り替えることができ、年間で約1,500トンのCO₂削減を達成しました。これにより、お取引先企業さまからの要請にもお応えできるようになりました。
また、大塚鉄工では「品質環境方針」を掲げ、現場での品質管理を徹底しています。品質を高めて製造ロスを減らすことができれば、工場の稼働時間を短縮できます。稼働時間の短縮は電力使用量の削減につながり、結果としてCO₂削減やコストダウンにも寄与します。
現時点では、節電やCO₂削減に向けた年間計画を専任担当者が立案・実施する体制までは整っていませんが、「質の高いものづくり」を通じて節電や環境配慮に貢献することが、私たちの使命だと考えています。
さらに現在、工場敷地内への太陽光発電設備の設置を検討中です。電力を購入するだけでなく、自ら再生可能エネルギーを生み出し、地産地消のエネルギーを活用することで、コストやCO₂のさらなる削減、そして企業価値の向上にもつながると期待しています。
その他にも、脱炭素の取り組みを積極的に進めており、2022年には白河工場で使用していた重油およびLPGを天然ガスへと切り替えました。これにより、CO₂削減だけでなくコスト削減にもつながっています。
また、本業とは別に「LEAF FACTORY TOKYO(リーフ・ファクトリー・トーキョー)」という植物工場事業にも取り組んでいます。これは東京本社ビル近隣に設けた植物プラントで野菜を栽培するもので、鉄工所とは対照的な新規事業ですが、「ものづくりのDNA」と「農業」というアプローチを融合させ、社会課題の解決に貢献する取り組みです。本業のCO₂削減だけでなく、消費者に近いエリアに産地を設けて配送時のCO2削減をめざした新しい農業にチャレンジしています。
電気を“自ら買い付ける”感覚
市場連動メニューの導入
(椎名)自社で使用するエネルギーについては、コスト削減やCO₂削減の観点から、これまでもさまざまな提案を社内で行ってきましたが、2025年4月からは、電気料金が市場価格に連動して変動する「市場連動型メニュー」への契約変更を決定しました。
市場連動型メニューに移行した場合、過去のデータからもわかっていたように、既存の固定料金よりも安くなる傾向があります。ただし、価格が変動する以上、リスクも伴います。そこでまずは、本社にて1年間のテスト導入を行いました。その結果、大きな問題も発生せず、コスト削減も実現できたことから、当初は慎重だった社内からも理解が得られ、白河工場での本格導入につなげることができました。
市場連動型メニューでは、Web上で公開されている市場価格を見ながら電気の使用量を判断することができ、自分たちで“電気を直接買い付けている”ような感覚に近いと感じています。今後、どこまで細かく対応できるかは課題ではありますが、変動する電気料金に合わせて製造ラインを柔軟に調整できるようになれば理想的です。
たとえば、電力単価が安い時間帯に工場をフル稼働させ、価格が高い時間帯は稼働を抑えるなどの運用ができれば、より効率的なコストカットと節電につながると考えています。
総合エネルギー企業への期待
(エネット営業担当)椎名さんは、前職でもエネルギー調達に携わっておられたので、本当に電気にお詳しい方です。以前、椎名さんのご発案で、市場連動と固定料金の“いいとこ取り”をするサービスを検討・ご提案したことがありました。そのときは、残念ながら十分なコストメリットを出すことができず、採用には至りませんでしたが、お客さまと一緒によりよいサービスを作り上げていくというプロセスは、私たちにとってもチャレンジングで貴重な経験となりました。
(椎名)もう少し詰めれば、きっと良いメニューになると思いますよ(笑)。
それと、ぜひ検討いただきたいのが、EnneSmart®(エネスマート)です。前日や当日に節電時間帯のリクエストが送られてきて、対応できれば割引が受けられるという、大変魅力的なサービスです。ただ、私たちのような工場では、前日に生産計画を変更するのが難しいという現実があります。スタッフのシフトを前日に変えるわけにもいきませんし。
DR(デマンドレスポンス)は、電力需要の逼迫を予測して行われるものなので難しいとは思いますが、たとえば1カ月前など、もう少し早めにリクエストが出るとありがたいですね。すべてに対応できるわけではありませんが、ある程度事前に需要を予測できるケースもありますので、そのあたりを工夫していただけると、より活用しやすくなるのではと感じています。
ちなみに、会社として可能な範囲での製造現場の省人化の取組みが今後のテーマになるかと考えています。そうなれば、前日や当日の節電リクエストにもロボットやAIで柔軟に対応できるようになりますし、省人化そのものに加えてエネルギー費の面でも大きなコストメリットが期待できそうですよね(笑)。
(椎名)エネットには、総合エネルギー企業としてとても期待しています。他の新電力会社とは異なり、Enneteye®(エネットアイ)のように、電力データをAIや他のシステムと連携できる強みがあると感じています。また、当社で導入を予定している太陽光発電の設置についても、ぜひご相談させていただきたいです。
専門的な知見と、安心できるバックボーンを持つ企業だからこそ、電気の小売にとどまらず、設備やサービスなど、エネルギー全般に関する相談ができるのはとても心強いです。長くお付き合いできるパートナーとして、今後もぜひ頼りにさせていただきたいと思っています。
Interview
大塚鉄工さま
大塚鉄工株式会社は、製造業としての責任を果たすため、環境への配慮を重視した取り組みを積極的に進めています。2020年には「EnneGreen」を導入し、年間約1,500トンのCO₂削減を実現。製造ロスの削減や品質向上による節電にも取り組んでいます。さらに、電気料金が市場価格に連動する契約への切替えや、工場敷地内への太陽光発電の導入計画、燃料の天然ガスへの転換など、多角的な視点で省エネ・脱炭素を推進。加えて、本社内で植物工場を運営するなど、環境負荷の少ない新たな挑戦も行っています。
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